2012年のF1サーカスは第7戦カナダGPを終え、7人目の優勝者を生み出しました。
今年の優勝者はバトン、アロンソ、ロズベルグ、ベッテル、マルドナード、ウェーバー、そして今回のハミルトン。
もちろん優勝には運にも左右されますがそれにしても稀にみる大混戦の年です。
今年は上記のドライバーの他に7度のワールドチャンピオンのシューマッハ、元ワールドチャンピオンのライコネンも復帰しており、89年からF1を見続けている僕としても久々に興奮するシーズンです。
現役のF1ドライバーで最速なのは誰なのでしょうか。
まず昨年のチャンピオン セバスチャン・ベッテル。
BMWのテストドライバー時代からフリー走行でレギュラードライバー以上のラップタイムを叩き出し、最年少ワールドチャンピオンにも輝いた逸材です。
ベッテルはとにかく速いという印象がありますが、バトルに強いかというと疑問符が付きます。2010、2011のレッドブルのマシンが飛び抜けて優れていたこと、予選でポールポジションを取って独走してゴールというパターン以外での優勝が少ないという感がありますね。
次に2009年チャンピオンのジェンソン・バトン。後藤久美子とジャン・アレジの如く、道端ジェシカの彼氏としても有名ですが、バトンはタイヤにやさしいドライバーです。
特に今年のタイヤ、ピレリタイヤは扱いが難しく、グリップする長さが短く、急にグリップを失うため、タイヤを保たせながら速く走れるドライバーは有利と言えます。また、バトンはウェットレースでも速いドライバーです。
ただ、やはりバトルに弱い印象や、タイヤにやさしいことがタイヤを温められず一発の速さが足りないという印象です。
2008年ワールドチャンピオンはルイス・ハミルトン。
ハミルトンは運転がうまいことは間違い無いと思います。一発の速さもあればバトルもできる。ただ、タイヤにやさしい運転ではないことと、メンタル面に難があり、マッサなど因縁の相手とやりあってしまったりといった心配な面もあります。新人でありながらトップチームのマクラーレンからデビューという史上最も恵まれた体制でしか戦ったことが無く、下位チームデビューだったらキレてしまっていたのではないかというきらいも。
2007年チャンピオンはキミ・ライコネン。
ライコネンはフィンランド出身なんですが、フィンランドは人口500万人ほどの小国。日本で言えば福岡県と同じ人口です。そんな小さな国ながらケケ・ロズベルグ、ミカ・ハッキネンというF1ワールドチャンピオンを産出しており、なぜフィンランド人が運転がうまいのかはF1七不思議のひとつと言われています。
フィンランドでは滑る雪道を子供の頃から無免許運転することが多いらしく、それで運転がうまくなるとか。
単純な運転技術で言えばライコネンが一番かもしれません。ただ、F1速く走るためにはチームが速いマシンを開発して、正しいセットアップをすることが不可欠です。ライコネンは自己中というか運転以外には興味が無い性格なので、フェラーリのファミリー的なノリに馴染めず、一度F1から去っています。
そんなチーム力を上げるのに長けているのは94、95、2000~2004と史上最多7度のワールドチャンピオンに輝いているミハエル・シューマッハです。ベネトン時代もフェラーリ時代も人心掌握術と結果でチームにやる気を起こし、チームメイトも含めてすべて自分が勝つための体制づくりを構築する力を持っています。
シューマッハはシーズン途中のデビュー戦でいきなり予選7番手を獲得。すぐにベネトンに移籍という脅威の新人でしたが、90年代のF1は今に比べるとラフプレーが許される時代であり、故意でぶつけてもペナルティが取られない面がありました。また、チームオーダーも今ほど厳しくなかったため、セカンドドライバーに勝ちを譲ってもらうこともありました。でもチャンピオンの回数が増えるに連れてそのプレッシャーからか安全な走り、無難な走りが多くなりました。引退レースであった2006年ブラジルGPはそんなプレッシャーから解放された素晴らしい走りを見せてくれました。
2010年からF1に復帰していますが、未だ表彰台にも登れず力の衰え感は否めません。ただ、徐々に自分好みの弱アンダーステアな車に開発の方向を導き、今年のモナコGPでは復帰後初のポールポジション(前戦のペナルティで降着)とその本領を発揮しつつあります。チーム内の政治力という意味ではナンバーワンと言っていいでしょう。
F1で最速ドライバーは誰か。総合力で言えば2005、2006ワールドチャンピオンのフェルナンドアロンソでしょう。
アロンソは明らかに劣るマシンでも結果を残す。勝負にならない状況でも最善を尽くしポイントを稼ぐ。予選の一発の速さもあり、ロングランもでき、バトルもできる。そしてチームをまとめることもできる。欠点が見当たりません。総合力という意味では一番ではないでしょうか。
F1はワンメイクレースではないため誰が本当に一番なのかわかりにくい部分があります。でもそれだからこそ多くの魅力を含んでいるのではないでしょうか。
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